【徹底解説】海外赴任で住民票どうする?[住民票を抜く影響と手続き]

【徹底解説】住民票抜く?抜かない? 海外赴任
【徹底解説】住民票抜く?抜かない?

海外駐在や海外就職など、海外に転居する際に日本の住民票をどうするか迷う方も多いのではないでしょうか?

本記事では、住民票の概要から住民票を抜いた時の影響(メリット・デメリット)、必要な手続きまで徹底解説します。

本記事を読み終わる頃には、住民票を抜いた際に発生する影響をしっかり理解した上で自分にあった選択ができると思います。

住民票とは?

住民票とは、「誰がどこの住民か」を市区町村が管理する台帳です。

年金や健康保険、その他の行政サービスを受けるために必要になることが多く、その他にも運転免許証や不動産登記、パスポートの取得や更新など幅広い場面で活用されます。

【原則】1年以上海外へ行く場合、住民票を除票する

1年以上海外に滞在する場合、原則として海外転居届を提出することになっています。これを提出すると現住所の住民票が除票となります。これがいわゆる住民票を抜くということになります。

一方で、海外での滞在が1年未満の場合、短期滞在として扱われ、基本的に海外転居届の提出は不要です。

ただし、上記はあくまで原則で、渡航前から海外での滞在期間が決まっていないケースや頻繁に日本と行き来する場合も多々あるかと思います。次の章で見ていく【住民票を抜く影響】を確認して、ご自身に合った選択をするようにしてください。

住民票を抜いた場合の影響(メリットとデメリット)

それでは海外転居届を出して住民票を抜いた場合に起こる影響を見ていきましょう。

国民年金

住民票が日本にある場合(住民票を抜かない場合)、国民年金の加入・支払いは義務ですが、住民票を抜くと国民年金の支払いが任意になります。つまり、住民票を抜くことでどちらか選べるようになり、メリットと言えます。デメリットは特にありませんが、しいて言うならば、後述するように一部の金融機関は日本に住民票がないと利用できなくなることがあるので、支払い手続きが少し面倒になることくらいです。

住民票を抜いて国民年金を収めない場合、海外居住中のコストを抑えられる一方、将来もらえる年金額は下がってしまいます。現在の国民年金の支払い額は月額16,610円、年間約20万円(令和3年度)です。海外にいても任意で年金を納めることはできるので、将来を考えて選択しましょう。(帰国後にさかのぼって支払うことも可能です。)

ちなみに、年金は最低10年間加入していないと将来の受給資格を得られないルールになっています。しかし、海外居住中で任意の支払いをしていなかった場合でも、加入期間には加算されますので、その点はご安心ください。

もう一点知っておくべきことは、障害基礎年金です。年金というと老後にもらうイメージですが、障害を負ってしまった際にも受給できます。こちらの支払い額も年金の支払い期間に左右されるので合わせて確認してください。

なお、駐在などで日本で給与が発生している場合、厚生年金の扱いは変わりません。会社の指示に従っていれば問題ありません。

住民票を抜くと国民年金は任意になる。

健康保険

国民健康保険は、住民票を抜く退会になります。

住民票を抜いた場合のメリットとしては、月々の保険料がかからない点になります。一方で、一時帰国時に病院にかかる場合に全額負担となってしまうというデメリットがあります。(健康保険加入時は3割負担です。)※一時帰国時は民間の旅行保険などでカバーすることも可能です。

ちなみに、日本の健康保険は一定の条件のもとで海外でも活用できます。「海外療養費制度」というもので、海外渡航中に日本の保険適応に相当する治療を受けた場合、必要書類を集めれば医療費の一部の還付を受け取れます。日本で同等の治療を受けた場合にかかる費用を基準にするので、医療費の高い国ではカバーしきれません。自分の行く国などで条件を調べてみて、住民票を残して保険に加入し続けるかどうか判断してください。海外医療費制度について詳しくは全国健康保険協会「海外医療費について」をご参照ください。

なお、健康保険も年金同様、駐在等で日本の会社から給与が発生している場合変わらず継続となります。こちらも会社の指示に従えば問題ありません。

筆者
筆者

筆者の場合、現地での医療は民間医療保険に加入することでカバーしました。

住民票を抜くと国民健康保険は退会となる。

住民税、所得税

日本は居住地国課税、つまり居住地を置いている国の税制に従って課税を行う制度を採用しています。したがって、住民票を抜いた場合、基本的には日本の税金は適応されません。

住民税は1月1日時点で住んでいた場所(住民票のある場所)で、前年の所得額に応じて発生します。つまり、1月1日より前に住民票を抜いた場合、その年は日本での住民税はかかりません。その場合、渡航先の国の住民税が適応されることになります。渡航する国の税制を確認するようにしてください。(1月1日以降に出国した場合、その年は海外にいながら日本の住民税を支払うことになります。)

所得税については、住民票を抜いた場合、国外での所得扱いとなるので日本の所得税が課せられることはありません。こちらも現地の税制が適応されることになりますのでご自身の行く国の制度をご確認ください。

住民票を抜いた場合のその他の影響

その他に住民票を抜いた場合に発生する影響を解説していきますので、併せてご確認ください。

印鑑証明がとれなくなる

住民票を抜くと登録していた印鑑証明を取れなくなります。また、除票後は過去に取得した印鑑証明書も使うことができなくなります。不動産や車の売却など印鑑証明が必要になる手続きは住民票を抜く前に済ませておいてください。

ちなみに、少々手間がかかりますが、海外では在外日本大使館でサインの証明をとることができます。

マイナンバーカードを返納することになる

住民票を抜くとマイナンバーカードを返納します。マイナンバーは銀行口座や証券口座を新規に開設する際に必要になる他、海外送金をする時にも求められますので、一部の金融機関(主にネット系銀行)の利用ができなくなります。ただちに利用停止となるわけではないですが、制限を受ける場合があります。

メガバンクやゆうちょは非居住者でも利用が可能です。(ただし月額数百円の手数料がかかる場合あり)お使いの銀行に早めに確認してください。

各種税控除が受けられなくなる

ふるさと納税や住宅ローン控除は日本の住民税や所得税が控除されるので、日本でそれらの税金が発生していない以上利用することができません。

NISAで買付ができなくなる、特定口座の保有株式を維持できない

資産運用関連では、NISAで新規の買い付けができなくなります。5年以内の海外転出なら、継続適用届出書を提出することで、口座自体は継続できるようです。しかし、買い付けはできません。

また、日本で株取引をしている人は特定口座を開設していることが多いと思いますが、住民票を抜くと特定口座で株式の保有を継続することができません。一般口座に移す必要があります。

詳しくは、ご利用の証券会社に問い合わせていただくことをおすすめします。

海外転居時の手続き

海外転居届はお住まいの市区町村の役所へ、渡航日の2週間前〜当日の間に提出します。提出は転居者本人のほか、世帯主、同一世帯の人が提出できます。本人が15歳未満の場合は、親権者が提出します。※上記以外の方が届け出る場合は、委任状の提出が必要になります。必要書類は以下の通りです。

【海外転居届提出時の必要書類】

  • 届出人の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポート、在留カードなど)
  • (代理人の場合)委任状と代理人の本人確認書類

また、以下の書類を持っている場合、窓口へ返却します。

  • マイナンバーカード
  • 住民基本台帳カード
  • 国民健康保険被保険者証
  • 国民健康保険退職被保険者証
  • 後期高齢者医療被保険者証
  • 介護保険被保険者証
  • 印鑑登録証

海外転居届を出さずに海外へ行ってしまった場合

海外転出届を出し忘れてしまった場合、後からでも届け出ることが可能です。提出方法は2パターンあります。1つ目は海外から郵送、2つ目は日本にいる同世帯の人による届け出です。

海外から郵送する場合、以下の情報と書類をまとめてお住まいの市区町村宛に送付します。※市区町村によって若干異なる場合もあるので、必ず送付前に確認するようにしてください。

【海外から転居届を提出する際に必要な情報・書類】

  • 国外に転出した年月日
  • 国外の住所、連絡先
  • 元いた日本の住所
  • 本籍、戸籍の筆頭者名(日本国籍の人のみ)
  • 転出した本人の氏名、生年月日
  • パスポートの写し(顔写真のページ、出国日のスタンプが押されたページ)

国内にいる同世帯の人が届け出る際は、以下の書類が必要です。

  • 出国した本人のパスポート写し(顔写真のページ、出国日のスタンプが押されたページ)
  • 届出人の本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)

まとめ

以上、住民票を抜いた際の影響と、海外転居届の手続きについてまとめました。
ご自分にあった選択がスムーズにできますように!

住民票以外の渡航前手続きに関しては、【2022年最新版】海外に住む前に日本でやっておくべき準備リストもご参照ください!

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