【日本企業・日本人必見】東南アジアへの進出が魅力的な理由

海外赴任

これまでに東南アジア2カ国(ベトナム・カンボジア)で現地採用から上場企業海外子会社の取締役まで経験した筆者が【日本企業・日本人が東南アジアへ進出する理由】を直近のデータや体験談を交えてご紹介します。

本記事を読むことで、日本からみたASEAN、そしてASEANと比べた日本について理解を深めるきっかけになるはずです。

日本企業・個人が海外へ進出する要因(進出を促す日本側の要因)

「そもそもなぜ海外へ出ないといけないんだ。日本にいてもいいじゃないか。」と考える方もいらっしゃると思います。そこでまず、日本企業・個人が(東南アジアを含む)海外へ目を向けるべき理由をお伝えできればと思います。

私自身、海外で働こうと考えた理由は日本でなんとなく閉塞感を感じていたからです。
データや私自身の経験からこの日本の閉塞感を考察してみます。

日本の人口減少と高齢化の進展【データ】

日本の人口は2008年をピークに減少局面に入っています。
現在では、毎年20〜30万人規模で人口が減っている状況で、これは地方都市が毎年1つずつ消滅していくようなイメージです。

一方、医療の発達や衛生環境の改善を背景に、日本は世界トップクラスの高齢化率となっています。今や日本の総人口のうちすでに約3割が65歳以上となっています(総務省統計局より)。

日本の人口の推移グラフ

情報通信白書(総務省、平成28年度)より

人口減少と高齢化が引き起こす問題は以下の引用にまとめられています。とにかく課題は山積みということがわかりますね。

少子高齢化の進展、生産年齢人口の減少により、国内需要の減少による経済規模の縮小、労働力不足、我が国の投資先としての魅力低下による国際競争力の低下、医療・介護費の増大など社会保障制度の給付と負担のバランスの崩壊、財政の危機、基礎的自治体の担い手の減少な様々な社会的・経済的な課題が深刻化する。

情報通信白書(総務省、平成30年度)より

改めてデータをみると、日本の将来にモヤモヤとした閉塞感を感じずにはいられません。

停滞するGDP成長率【データ】

国力を測るうえで代表的な指標といえるのがGDP(国内総生産)です。
着実にGDPを増やしている先進各国と比較して、日本のGDPは過去20年間横ばいです。世界3位の経済大国とはいえ、1位、2位の米中との差は大きくなるばかりです。

各国名目GDPの推移

日本生命公式サイトより

大きな要因は先述の人口減少と少子高齢化ですが、他にも「技術革新(イノベーション)の少なさ」や「生産性の低さ」、「起業の少なさ」など様々な要因から成長を実現できていないと言われています。

経済全体が伸び悩んでいるなかでも成長していける一部の優秀な企業や個人ももちろんいますが、私を含む一般的な視点から見ると、日本の将来に希望を持つことは厳しいと感じてしまいます。

懸念される災害リスク

ここまでお話した人口減少とGDPの話は長いこと議論されてきた内容です。

しかし、今後の日本を待ち受ける出来事として近年、注目を集めているのが自然災害のリスクです。
活断層と活火山が多い日本はもともと災害大国と言われていました。一般財団法人国土技術研究センターによると、日本の国土面積は全世界の0.28%にも関わらず、災害によって受けた被害金額の11.9%が日本の被害金額となっています。国土面積の割に災害が非常に多いことがわかります。

【将来予想される代表的な災害】
・南海トラフ巨大地震…想定被害額220兆円(30年以内に70%)
・首都直下地震…想定被害額95兆円(30年以内に70%)
・その他、富士山噴火や日本海溝・千島海溝周辺地震なども懸念されています。

参考:国土交通省「国土が抱える災害リスク

上記を代表例に、日本各地で様々な災害リスクが存在します。金額もですが、それよりも圧倒的に重要な人的被害を防ぐべく政府や企業、個人レベルで色々な防災の取り組みがなされています。
これらの災害は周期的なもので、近い将来確実に訪れる未来です。目を背けずに対策をとる必要があります。

固定化した社会【体験談】

日本側の要因の最後に、日本の固定化した社会について体験談を交えて話したいと思います。

ここで一瞬だけ自己紹介にお付き合いください。筆者の日本でのキャリアは6年になります。新卒で日経コア30に入る某大手鉄道会社に入社、その後、地方へ移住して個人事業をしたり、物流会社を経営したり、上場企業のM&A部門で仕事をするなど様々な方面で経験を積むことができました。その中で強く感じたことは、日本はどこの社会(市場)も固定化しているなということです。

・大手企業では、基本的に入社順に昇進していき、規定のキャリアを歩んでいく。
・地方へ移住すると従来の理解されやすい事業は受け入れられるものの、新規性の高い事業が浸透するには想像以上に時間がかかった。
・物流会社では新しい技術の導入には規制の壁が立ちはだかる。

どれも自分の能力不足で大きな変化を起こせなかったと感じる一方、いい意味でも悪い意味でも日本には変化の余地が少ないなということも感じました。変化を起こさなくとも回っていく社会は本当にすごいなと感じる一方、何かつまらなさを感じたことも確かでした。

人や地域、企業によって全然内容は異なると思いますが、共感してくださる方もいるのではないでしょうか。

この固定的な社会も日本の閉塞感を生む一つの要因だと思います。

日本企業・個人を惹き付ける東南アジアの魅力

ここまでで、日本企業・個人がそもそも海外に目を向ける日本側の要因について考察しました。

次に、これまで見た内容の裏返しになりますが、東南アジアが日本企業・日本人を惹きつける要因(プル要因)も最新データと経験談を交えて考えてみたいと思います。

高い成長性【データ】

一昔前は豊富な労働力が確保できるため、メーカーを中心に製造拠点としての進出が目立ちました。ところが、最近では各国の経済自体も成長してきており、製品やサービスの販売先としての魅力も高まっています。

まず、ASEAN全体の人口は6億6000万人と日本の5.2倍、現在も上昇傾向にあります。
注目すべきは若年層の多さです。現在私が暮らしているベトナムの平均年齢は31歳で、カンボジアにいたっては24.9歳です。(日本は2008年時点ですでに44歳)

ASEANの人口推移グラフ

国際機関日本アセアンセンター【ASEAN情報マップ】より

この通り、若い世代が経済発展を牽引していることもあって、GDP成長率が非常に高くなっています。以下は2010年〜2020年の日本を含む各国成長率の比較グラフです。日本の成長率が0〜2%のところ、ASEAN各国はおおむね3〜8%で推移しています。

世界銀行データより

日本の高度経済成長期もそうでしたが、経済全体が右肩上がりの状況であれば、個人や企業の活躍の余地が広がり、将来に希望を持てるでしょう。

地理的な近さ

東南アジアの魅力として、日本との地理的な近さが挙げられます。
上記の人口や経済の成長はアフリカ諸国なども同様に魅力的です。むしろアフリカのほうがエネルギーがあるかもしれません。しかし、日本から見た場合、アフリカに比べた東南アジアの優位性はその近さです。東南アジアの場合、どの国も飛行機でおよそ6〜8時間もあれば行くことができます。私もカンボジアと日本を毎月往復してた際には、カンボジアで仕事を終えて深夜便に乗り、翌朝早朝には成田空港に到着していました。

また、時差も2時間程度とリモートで仕事をする場合もほとんどストレスになりません。これがアフリカ諸国だと移動に最速でも20時間前後かかる上、7時間の時差から業務時間の調整コストが発生します。

心理的な近さ

同じアジアということで文化的に似ている点も事業や暮らしに有利なポイントです。

当然、国・地域、個人によってそれぞれなので一概に言うことは難しいですが、やはり同じアジアに位置し歴史的に交流のあった東南アジア諸国とは共有する価値観が比較的近いのは魅力と言えます。

また、非常にありがたいことに、今のところ、日本に対して有効的な姿勢を持ってくださる方が多いことも大変嬉しいポイントです。
背景としては、漫画やアニメなどのコンテンツの普及。自動車や食品、最近ではスーパーや百貨店などの小売り業など民間企業が進出して現地の人の暮らしを支えていること、またODA(政府開発援助)による貢献などがあります。

根底に友好的な感情をお互いに持ち続けることができれば、事業の生活も有意義なものにできますよね。

いい意味で発展途上【体験談】

日本と東南アジア(ベトナム、カンボジア)の両方で実際に働いた筆者が感じたことですが、
東南アジアはいい意味で発展途上であり、可能性に満ちあふれています。

例えるならば、経験を積んで自分なりの形が決まった大人(日本)と、新しいことをどんどん吸収して変化・成長していく子ども(東南アジア)のようなイメージです。

もう少し深堀りすると次の3点が思いつきます。

①【規制と既存勢力が少ない】すでに細かく規制やルールが決まっている日本に対して、東南アジア諸国はルールを作っている段階にあります。そのため、例えばカジノやドローン、金融サービスなど日本では実現できないサービスがどんどん生まれます。産業界についても、日本ほど序列が固定化していないので、若い企業が大手を抜いてしまうことも十分ありえます。というより、業界によってはまだ圧倒的な強者がいなかったりしますので面白いです。

②【意外と最先端】インフラなどの社会システムについても既存のものがない分、新しい形が導入されています。有名な話ですが、東南アジアでは固定電話はほとんど普及せず、ダイレクトにスマートフォンが普及しました。また、鉄道会社の国際業務部で勤務していた際に知ったことですが、タイなどに導入された鉄道は日本よりも新しいメトロシステムのようです。考えてみれば当然ですが、鉄道自体の導入が最近のため、日本が古くからあるインフラの整備に苦労している中で、最新式のシステムが導入されているのです。
このような現象をリープフロッグ現象(カエル跳び現象)というそうです。

③【タイムマシン経営】最後に、日本に普通にあるサービスがまだないケースが多々あります。それだけでなくベトナムにはあるけれど、カンボジアにはまだないものもたくさんあります。
ソフトバンクの孫正義さんもアメリカと日本を比較してタイムマシン経営を成り立つということを言っていましたが、東南アジアにもそのチャンスがあります。

凝り固まった型がなく、新しい価値観が受け入れられやすいという点は事業を行う上ではメリットが大きいのではないでしょうか。とはいえ、全く未知の市場というわけではなく、日本などを参考にできる部分もあることが心強いですね。

まとめ

日本はこれからますます少子高齢化、人口減少が進みます。また、GDPもいまのところ横ばいがつづき、迫りくる災害リスクや成熟し固定化した社会になんとも言えない閉塞感を感じます。
そのような状況化で、心理的にも物理的にも日本の近くに位置し、発展著しい東南アジア諸国は日本企業・日本人にとって魅力的に映るのではないでしょうか?

アフターコロナでは一気に東南アジアが再注目を浴びるのではないかと思っています。
記事を読んでくださった方に少しでも東南アジアの魅力が伝われば幸いです。

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